大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

高松高等裁判所 昭和44年(行コ)1号 判決 1972年9月28日

控訴人

曾我部憲一

訴訟代理人

白石基

外一名

被控訴人

伊予西条税務署長

福永安二

指定代理人

河村幸登

外五名

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人らは「原判決を取消す。被控訴人が控訴人の昭和三五年度分山林所得について昭和三八年三月一三日付でなした所得税及び無申告加算税の賦課決定を取消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする」との判決を求め、被控訴指定代理人らは主文と同旨の判決を求めた。《以下、省略》

理由

当裁判所も、控訴人は本件山林所得につき納税義務があり、その課税山林所得金額は金五一六万円であり、無申告加算税額は少なくとも本件決定額金二六万六、二五〇円となるのであるから、その範囲内にある被控訴人の本件所得税並びに無申告加算税の賦課決定に違法な点はないと判断するものであつて、その理由は、原判決の理由に説示するところと同一であるから、ここにその記載を引用する。《原判決の一部訂正部分=省略》

以上の認定、判断(原判決引用分を含む)に抵触する当審における控訴本人尋問の結果はたやすく採用できないし、他に以上の認定、判断を左右するに足る証拠がない。

なお(1)控訴人が昭和三六年度分の所得税並びに無申告加算税の賦課決定に対しても異議があり、これに対し昭和三五年度分に対すると同様、審査請求を行なうつもりであつたとの事実は、<証拠>によつて認められるところであるが、(しかし結局その審査請求が行なわれなかつたことは、右<証拠>に徴して明らかである。)かような事実があるからといつて、そのため直ちに前記(原判決引用)贈与の追認の事実の認定が許されなくなるものとは考えられない。(2)控訴人はそのおじ曾我部進間の前記(原判決引用)訴訟―本件山林を含む山林相続に関する争訟―のため支出の費用は「必要な経費」として所得額から控除されるべきものである旨を主張するようであるが、この主張も採用できない。すなわち当時施行の所得税法(昭和三七年法律第四四号による改正前のもの)九条一項七号、一〇条の四、一項により、山林の譲渡所得から必要経費として控除を認められるものは、当該山林の譲渡所得をうるため通常一般的に必要と認められる経費であることを要するが、右のような訴訟に関する出費は、本件山林の所有権を確保するための支出であるとはいえても、本件山林の譲渡所得自体の取得、確保ないし保全のため通常一般的に必要な経費とはとうてい認められないからである。のみならず、控訴人が右訴訟に関して相当多額の出費をしていることは弁論の全趣旨に徴して明らかであるが、しかしこの出費中本件山林に関し、ことに昭和二七年一二月三一日以後において支出した部分が果して幾何の金額であるかの点は本件全証拠によるも不明というほかないからである。(なお、控訴人が本件山林を相続によつて取得したものであることは弁論の全趣旨からみて明らかであるから、控訴人において相続税を負担するのは当然であり、相続税を支払つたからといつてそれにより、本件山林をその後他に譲渡したことによる所得税の負担が、他に法定の除外事由もないのに、免除ないし軽減されるべきいわれはない。)

そこで控訴人の本訴請求を失当として棄却した原判決は相当であり、本件控訴は理由がないのでこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用して主文のとおり判決する。

(合田得太郎 谷本益繁 石田真)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例